日本画家荒井寛方のインド滞在日誌とスケッチ(1916-18)のデジタルアーカイブ Digital Archiving Kampo Arai’s Diary and Sketches in India (1916-18)

タゴールの詩書

(さくら市ミュージアム 荒井寛方記念館 所蔵)

詩書画像;18

1 ラビンドラナート・タゴール詩書

大正5(1916)年~昭和4 (1929)年

絹本 墨 額装 90.0×40.5

さくら市ミュージアム 荒井寛方記念館 蔵

タゴールは最初の日本滞在で風景や人すべてに深い感動を覚えた。

日本画にしては特に下村観山の「弱法師」(大正4年 再興第2回院展出品) を見て日本画の精神性の深さと高い技術に感激する。

本書は下村観山が所蔵していたものと思われる。

観山の文字で「堂後於流翁」(タゴール翁)と箱に記してある。 タゴールが観山と出会った時に贈ったものであろうか。その後この書は日本画家で観山と同じ日本美術院の小倉遊亀氏に愛蔵され、自宅に長く掛けられていた。


英文の
  Lead me from the unreal
  to the real, 非現実から現実へ
  from darkness
  to light, 闇から光へ
  from death
  to deathlessness 死から再生へ導き給へ
  Rabindranath Tagore
    ラビンドラナート・タゴール

からは再生や存在を歌ったタゴールの哲学が読み取れる。

詩書画像;17

2 ラビンドラナート・タゴール詩書

大正7年(1918)

絹本 墨 軸装 130.5×37.0

さくら市ミュージアム 荒井寛方記念館 蔵

荒井寛方は大正5年からタゴール家に滞在し、本格的な美術交流とタゴール一族との絆を深めていった。本書は、帰国する寛方に別れを惜しんだタゴールが贈ったもの。 日本の筆と墨でしたためた美しいタゴールの詩書である。


 荒井寛方氏へ
  愛する友よ
  ある日 君は客人のように
  私の部屋に来たった
  今日君は別れのときに
  私の心の内奥に来た
    ベンガル暦1325年
    ボイシャック月25日
      ラビンドラナート・タゴール

        (我妻和男訳)

出典:さくら市ミュージアム荒井寛方記念館 第79回企画展
『タゴール生誕150年記念インドを描いた作家たち』2011年、p.18-19